雨の日 ふるえる涙
すっげぇ雨―
「試験日和ってか」と花井梓が言った。
「ンだ、そりゃ」
相手の男の子は花井の話にうわの空で返事をした。
「あ、オレ傘部室だ」と追加したけど、先の話には全然関係のないような話題みたい。
どうやら、こんな大雨の中で傘を持っても、家についたらズボンが濡れるのは決まったことだ。
「オッケー。ンじゃ、またね」と花井は校舎を出た。
さっきの部室というのは、西浦高校硬式野球部の部室だ。ここ西浦野球部は、今年から硬式になったばかりで、部員も一年生しかいない。先校舎を出た花井はポジションがセンター、花井と話をしていたのはシニア出身のキャッチャー、阿部隆也。
やっと部員が入って、チームとして動き始めたといっても、部員が十人しかいない。夏の県大会が控えてるし、唯一のキャッチャーとしてここで風邪とか引いたら、チームも大変になるだろう。部室は運動場の向こうにあるんだ。乾いたまま部室に行くことができないみたいだ。
タオルを頭に被って、阿部は校舎から一所懸命走り出した。目的地はもちろん、部室だ。
やっと部室に着いた。思ったより、あんまりひどく濡れてないみたい。部室のドアのノブを回すと–
開いてる?
ガキャーとドアを開いた。
「誰かいる?電気ぐらい付けなよ」ドアを開いてながら、電気を付けた。
「あ…阿部く…ん」
阿部の前に立っているのはチームのピッチャー、三橋廉。ぺたぺたと、髪から水が滴って、冷たくて体が震えてるみたい。
「ばっ、馬鹿!何やってんだお前、風邪引くんだろ!」
「ご…ごめん」
「何でオレに謝るんだ」
三橋のやつ、まだ中学校の思い出から脱出してないのか。たぶんチーム内ですっげぇ嫌われたかも。あいつがピッチャーへの執着でマウンド降りなかったせいで、チームが三年間負け続けたんだ。三橋は元チームメートへの罪の意識でいっぱいで、学校変わった今でもあいつらに平伏したままなんだ。あの腐った負け犬根性、すぐにめそめそしてひとをいらいらさせる態度…あんなには、マウンドにじゃ、勝てる試合も落とすんだ。なにかしなくちゃ。
慌てて自分のタオルで髪と顔を拭いてやった。でも、自分のタオルもさき走っていたうちにだいぶ濡れてしまった。仕方なく、花井のたんすを開けて、やはり中にはタオルでいっぱい。
「か、傘なくて…」
「いいから黙って拭いてろ」といいながら、花井のタオルを三橋のとこに持って行った。
「こ、これ花井君…の?」
「あいつタオルたくさん置いてたんだよ」
「か、勝手に使っちゃっ…」
「ちゃんと洗って返せば平気だ。ンなことで怒るやつじゃないよ」
ちょっと視線をそらして、「それに、タオルとお前じゃ、どう考えてもお前のほうがウェートでかいだろ」
「!!」
三橋はあっけに取られた。それはタオル以下なんて言われたら立ち直れないだろう。
「どうしよう…けど、うれしい」と三橋は思った。
「っかし、濡れすぎじゃねぇ?校舎からここまでって、そんなに濡れる?」
「うえっと…い、一度来て鍵がなくて、取り帰ったらかばんがなくて、そ、それから…」
「あーもういい!分かった。何か着替え持ってる?マジで風邪引くぞ」
「な、ないん、です…」
「しょうがないやつだな」
くるりと後ろへ向き直って、ごそごそと肌着としているシャツを脱いだ阿部君。
「おい、ほら」
二度とはあっけに取られた三橋。
「貸すよ、そのまま帰るよりマッシだろ」
「え、え…あ…うん…」
まだ夢から覚めてないような三橋。
「何だよ、ちょっと汗臭いぐらい我慢しろ」
「ち…ちが —っ」
まだ話が言ってるうちに、めそめそし始めた。
「な…何で泣くんだよ。汚いのは悪かったって」
今度は阿部君のほうがどもってた。
「ご…ごめ、ん、あべく…うっ…うぇ…」
「別に迷惑とか思ってないからさ、ほら、泣くなよ」
「泣かれる方こそ困るんだよ」とは思っているが、いわなかった。
「お前はオレのピッチャーだからさ」
「………っ……」
いきなり、泣き声がとまった…
が—
二秒後、その泣き声がさらに大きくなった。
「あーもう、泣く前にさっさと着替えろ!!」
ある先生の話によると、あの日居残りしてるとき、運動場の向こうの野球部部室から変な叫び声がしたそうだ。
着替えた三橋は、胸の前に「阿部」という字が書かれてあるシャツを着ていた。
「あ、ありがとう」
「いいよ、別に。帰ろう」
「これが阿部君の匂い…なのかな…」と三橋は思った。
「早くテスト終わんないかなー」
「そ、そだね」
いつか、あなたに相応しい心から誇れるピッチャーに!
あとがき
「ようやく出来上がった!!!!」と私は叫びたい。
先週の木曜日先生がこの小説の宿題を出してから、ずっと悩んでいるって言うか、プレッシャーを抱いているんだった。あっという間に、今週の火曜になった。でも小説はぜんぜん書いていない。「書かなくちゃ書かなくちゃ、書かないと明日は死ぬー」と思いながら、一生懸命小説を考えて、ようやくできた。
というと、厳密に言えば、この小説はまったく自分の作ったのじゃない。今日の午後、宿題のことに悩まされている私は、このごろすっごく好きなアニメ「おおきく振りかぶって」が頭の中に浮かんだ。「じゃ、阿部君と三橋君のことを書こう」と思うと、すぐストーリのモデルができた。とてもとても原作が好きだから、主役たちの会話も原作を真似って、あまり丁寧じゃないように書いたけど、日本人の若者の間で交わしている会話はこのような丁寧じゃないものだそうです。原作はボーイズラブっぽいだから、仕方がなくここに何句かの曖昧っぽいセリフが出てきちゃった。でも、この小説のテーマとしている「愛」というのは、その二人の男(一応「男」って呼ばせてもらいましょう^^)の間の愛じゃなくて、仲間として、チームメートの間の愛だ。このような愛は、私が今まで求めているもので、このアニメを見るとすっごく共感を覚え、感動した。
そういえば、自分の初めての小説は日本語で、それに同人作ということは思わなかった。ほんとに自分に驚いたな~私の初めての小説、楽しんで読んでください。